【書評】Gene Mapper(ジーン・マッパー)の未来は「風の谷のナウシカ」につながるか? -full build- (3)

※この記事は、「Gene Mapper」及び、コミック版「風の谷のナウシカ」のネタバレを含みます。特にナウシカ未読の方はご注意。

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◆ナウシカの「怒り」の本質は何か?


コミック版ナウシカの結末には批判的な意見が多い、んだそうです。
しかし、…果たしてナウシカの「怒り」は、どれだけ理解されているのだろう、か。

■漫画版「風の谷のナウシカ」のラストについて : 情報学ブログ

上記エントリーはかなり哲学よりの内容で難しいけれども、このラストで描きたかったことは、ナウシカのこの行動が正しいんだ!ってことではなく、要は「ジレンマ」ではないかと思うんです。

生命という、矛盾に溢れた、ジャンクコードだらけの存在。
それが、絶対者を名乗る一面的な論理の施行者たる「墓所の主」たったひとりにコントロールされる…。

断罪されているのは、遺伝子工学の是非、なんて単純な話じゃない。特に、ナウシカ自身も遺伝子工学の子ども、という矛盾を抱えている以上は。


ここで、あるひとつの仮定を考えてみましょう。


もしも、腐海をはじめとする生体浄化システムを作り出した原因が
「バイオテロだった」
と仮定してみたら、どうだろう?


そう、まさか、世界中の人が一致団結して民主的な手続きを経て
「腐海を繁殖させて地を埋め尽くそう」
とか、決めたわけじゃないよね?そうだとしたら、世界の全ての人がその事実を知っているハズ、いくらなんでも、その情報が全く消えるなんてありえないよね。

つまり、誰かが、黙って、勝手に、腐海をはじめとする生体浄化システムをばら撒いたんだ。そう考えたほうが実は、自然だ。
そして、それに対応すべく生体改造をほどこした人間たちだけが生き残った。おそらく、瘴気の病の治療、なんて名目で、真の目的は隠して生体改造を行ったんだろう。

いろいろ御託を並べてみても、それを客観的に見れば「バイオテロ」という。


バイオテロ、と考えると、とたんに構図がわかりやすくなる。例えば、Gene mapperのバイオテロの首謀者が、もしも一万倍くらいアタマのいい奴だったら。そして、世界を天然自然な状態に戻す、という偏った理念の為には、現生人類の抹殺くらい厭わないほど、過激で冷酷な奴だったら。


<作り物>に頼らなければ生きていけない人類。それを汚れたものと一面的に断罪し、浄化するために、浄化システムをバイオテロで放つ。その結果生み出されたのが、ナウシカの世界だと考えてみよう。
あなたは、そんな世界を許容出来るか?その「浄化」とやらの最終仕上げを行う機関たる「墓所の主」の存在を、受け入れられるのか?なにしろ、そこで浄化される対象になってるのは、現在のあなた自身ですからねー。

「墓所の主」が言っていることは、一見もっともらしい。だからこそ寧ろそちらを擁護し、それを破壊したナウシカを批判する声が多いのだろうけど、でも、
「腐海はバイオテロによって生み出された」
と仮定しちゃえば、根本からハナシが変わってしまうんスよ。とたんに、「墓所の主」がナウシカに言ってることが
「俺たちのバイオテロはもう最終段階に来てしまったからには、これを中途半端に止めたらもう人類滅亡ってことになってしまうんでぇー、悪いんだけどぉ、もー、最後までやらせてくだせえよ、このバイオテロ。」
って文脈に変わってしまうんでして、もうそこまで文脈が変わってしまったら誰もがう

「お前のせいやないかぁーい!!」

と、吉本のノリでツッコミを入れてしまうこと、確実なわけでして。



吉本のノリでツッコミせずとも、「墓所の主」をバイオテロの首謀者の末裔と考えるととたんに<絶対者>の仮面が剥ぎ取られ矮小化されてしまう、そして、彼がナウシカに向けて放った言葉が全て、「恐怖を人質にするホイッスル・ブロワー(笛吹き)」に思えてくる。
やってることの規模は大きくちがうが、「墓所の主」の言葉と、ジャーナリスト、<ワールド・レポーティング>のサーシャ・ライフェンスの虚仮威しの仰々しいコメントと、本質は何がちがうのか。


そこまで考えてしまうと、実は、ナウシカと林田は、同じ敵と戦っている。




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◆ナウシカは「林田の善意」を認めるか?

善意といっても、いろいろあるなあと。
いきすぎた善意は「”悪”の断罪」という機能を、持ってしまう。

林田の決断。

バイオテロを暴きたかった?それも勿論、目的だったでしょう。
しかしそれだけではなく、彼はきっと、世界を変える力を持った新しいテクノロジーが、ある特定の組織のみに使われることを嫌った。一面的な善意で、一面的に世界が変えられてしまうことを、危険だと思った。
たぶん、直感的に。



遺伝子工学の力を信じるもの。
遺伝子工学の力を破壊するもの。

真逆の存在に見えて、実は、両者には通じるものがある。



未来の可能性を見つめるもの。
虚無の深い穴を見つめるもの。

真逆の存在に見えて、実は、両者には通じるものがある。



「”一面的な意思”を否定する」ということだ。


ナウシカは、「墓所の主」という存在と、そこに隠された遺伝子工学の技術を、認めなかった。破壊しつくした。
しかし、林田という一見自分の立場と相反する人間の存在は、受け入れるのではないだろうか、矛盾と混沌を受け入れることと同じように。



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◆最後に、蛇足。


「虚無だ!!それは虚無だ お前は危険な闇だ 生命は光だ!!」
「違う いのちは闇の中のまたたく光だ!!」
「すべては闇から生まれ闇に帰る お前達も闇に帰るが良い!!」



虚無をおそれない。ということ。


闇から生まれたものは、闇に還ることを恐れない。
光から生まれたものは、闇に消えることを恐れる。

でも、光もまた闇から生まれたものであると気づけば、光から生まれし者たちもまた、闇を恐れることをやめるだろう。


…なんの脈絡もなく、そんなことを考えていました。
このエントリーを書きながら。

では、闇の中でサヨウナラ。


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