ヒロシはなぜブレイクしないのか - お笑い芸人と限界効用

そういや昔、池田センセーが小室哲哉の音楽について「限界効用」という切り口でエントリーを書いていて。

■小室哲哉シンドローム - 池田信夫 blog(旧館)

「僕はビートルズ」というマンガで、音楽は生活に必要無いものだ、という趣旨の台詞がある。「(だから)最高のものを選ぶのさ。」
何が最高か、というのは、触れた人の心にどれだけ新しいものを与えるか、によるのでしょう。というわけで、音楽に限らず芸能全般そうだと思うけど、常に触れた人の心に新鮮な情動を与え続けなければ、その価値は、あっという間に下がる。

  
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限界効用、というものを説明するに、たぶん音楽よりもお笑いの方がわかりやすい。
なぜなら、ポップスのアーティストというものは音楽そのものの価値だけではなくある種宗教的な、カリスマ、とかいう人間商品の価値をも付加価値として利用し、音楽そのものの商品価値が下がってもトータルの効用を維持するもんで。
でもお笑いは、笑い、という、陶酔からさめさせる効果のある感情を利用した商売。それだけに、面白いか、面白くないか、という単純なポイントでザンコクに商品価値を計られてしまう。

そのザンコクさに日夜直面している、お笑い芸人、という職業の人は、ハンパ無いプレッシャーにさらされているんだろうなあ。


話がそれてしまったので本題に戻します。
お笑いの世界では実は、限界効用逓減、という現象を端的にあらわす言葉があります。
「一周する。」
ってやつです。

実はこのエントリーを書こうと思ったきっかけは、ヒロシはなぜ面白いのにブレイクしないの?というツイートを目にしたことからなんですが。
お分かりのように、いくら、えー今見ても面白いのにー、と言っても、一度「一周した」お笑いタレントは、そうそうブレイクはしないわけでして。

一周した芸人が再ブレイクするには「イノベーション」が必要になります。

限界効用が逓減しきった有吉という芸人が再ブレイクするには「毒舌芸人になる」というイノベーションが必要だったわけで。彼がもう一度ヒッチハイクに出かけようがまたCDを出そうが、再ブレイクはしなかったハズ。毒舌芸人、という強烈なイノベーションを自身に起こしたことが、再ブレイクにつながった、と。


多くの芸人には、そんな強烈なイノベーションは出来ません。
なので例えば俳優への転身など、新たな需要喚起に乗り出すこととなります。

芸人として一周した人も、俳優としてはもう一周出来るかもしれない。
あるいは司会者、あるいはコメンテーター、クイズ回答者…。

吉本興業という企業がお笑いで大をなしたのは、実はこのあたりのノウハウが大きいんじゃないでしょうか。
芸人としての限界効用が逓減しはじめたと思ったらすかさず別な需要喚起に乗り出すことで、本業の芸人としての限界効用逓減も相乗効果で防ぐ、と。

んで、このあたりのノウハウが蓄積されていないサンミュージックには、一発屋がどんどん蓄積されていくと(°∇°;)



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吉本、って名前が出てきたので、こんな例を。

オリエンタルラジオ、という芸人。武勇伝ネタが完全に一周してそのまま消えるか?と思ったら、チャラ男、というイノベーションを起こしやがった。んで再ブレイク。

んで。有吉の毒舌芸人、みたいな強烈なイノベーションには及ばないものの、このチャラ男、というイノベーションは、それなりに長続きするんじゃないかと思うですよ。

なぜならば。
「こいつねー、テレビ向けのキャラじゃなくね、ほんっとマジチャラいんですよー」
という、他の芸人の乗っかりや、
「あたしこんなチャラい人やだぁー」
という、アイドルの乗っかりやらが、期待できるからなんです。

吉本が上手い、と思うのは、個々の芸人の限界効用を、チーム戦で逓増させるスキルを醸成していることなんですよ。チャラ男、みたいな、チーム戦の材料としてうまく使えそうなキャラクターには、常に他者のイノベーションがフィードバックされるから限界効用逓減が起こりにくい。



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今…お笑いにおける限界効用の急速な逓減…すなわち「一周する」という現象を一番危惧されているのはなんといっても
「スギちゃん」
でしょう。

さっき言ってた芸人に他者からのイノベーションのフィードバックを起こして限界効用逓減→一周する、という現象を遅らせよう、という理論から考えると、スギちゃんはツイッターなどでのネタ募集などを実施することで、数ヶ月は延命出来るんじゃないかと。

しかしスギちゃんが、ワイルドだろぉ?が一周したから別のギャグを考えました!といっても、それはイノベーションにならない。同じ方向性の努力だから。そのギャグがどんなに強烈に面白かったとしても、それは再ブレイクには繋がらない。


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ところで、イノベーションを起こさなくてもお笑い芸人が再ブレイクする場合があって。
いや、実のところ有吉氏なんかもこれは上手く利用したんだと思うんだけど。

要は、人気が無くなる→ギャラが安くなる→ギャラが安ければオモロなくてもTV出演の機会が増える→露出が増えて意外と支持される、という現象ね。

先ほど、ヒロシって面白いじゃないかというツイートを見たって書きましたが。つまり、限界効用の逓減に伴い価格が下がることで、供給量が増え新たな顧客を獲得できてしまう、という現象は、お笑い芸人にも起こるわけなんです。


お笑いの世界は、限界効用の逓減と以下に戦うか、そのわかりやすい事例に満ちています。
企業の宣伝戦略などの参考にもなるのではないでしょうか。
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